次の図は音楽に反応する脳です。音楽を聞くと脳の様々な場所がそれぞれの仕方で反応します。これを逆に応用すれば働きの弱くなった部分を回復させたり、弱くなるのを防ぐことができます。歌声広場に参加して脳によい刺激を与えましょう。(図の細かい内容は無視して音楽が脳に影響を与えていることを理解してください。)
音楽は脳に作用し身体に張りめぐらされた神経系にその情報が届けられます。次の図は音楽がストレス解消に役立つことを示しています。血圧や心拍などに関与する自律神経系はこれを緊張させる交感神経とこれを緩和する副交感神経のせめぎ合いでバランスをとっています。ところがストレスを受けると交感神経だけが反応して緊張が高まります。そこで音楽に触れると音楽は副交感神経に作用し自律神経を和らげます。結果としてリラックスが得られるのです。
海馬に蓄積された記憶を引き出し、視覚野、聴覚野、感覚野など多岐にわたる脳の部分を刺激することは脳が活性化し、認知力の向上と改善に役立ちます。これを応用したのが認知症治療に用いられる回想法ですが、健常者に用いれば認知能力低減を予防するだけでなくその向上にもつながります。歌声広場で懐かしい音楽に触れることにより脳の記憶の扉が開き、その時代の自然や生活の風景が生き生きと蘇ってきて気持ちが元気になります。
悲しい曲がひとにどのように作用するかを確かめた研究があります。その結果は、“沈んだ”や“哀れな”などの負の感情はほとんど起こらず、“愛情”や“大切”などのロマンティックな感情や、“活気が出る”や“生き生きする”などの前向きな感情が起こりました。アリストテレスは、悲劇にはカタリシス(浄化)作用があり、鬱積した気持ちが解放されると言いましたが、悲しい音楽にも同様の働きがあるようです。歌声広場では悲しい曲もどんどん取り入れていきたいと思います。
音楽の多面的な効果が認知症の治療あるいは予防に対して確認されています。一つ目は、有酸素運動です。認知症に対する効果がエビデンスとして確立しているのは運動(有酸素運動)ですが大きな声での歌唱はまさに有酸素運動。二つ目は、回想法的効果です。懐かしい曲はその人の若く、輝いていた時代を思い出させ、誇らしい記憶を再び固定し、心を安定させます。三つ目は、認知刺激訓練としての役割です。歌詞を読む、伴奏を聴きながら歌う、伴奏と合っているか判断し、ずれていたら修正する。これは極めて複雑な認知的な作業です。
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